甲南商店街の創業50年の漬物店「阿波屋」や岡本商店街の「ひつじ書房」がなくなったのは残念。街の潤いは老舗が作ります。酒蔵、商店街、銭湯などを、車ではなく、歩行者や自転車が行き交うような、むしろ不便な街づくりが必要です。

私の出身地の一つ、茨城県の水戸市には、40年前に駅前の台地にある「上市(うわいち)」と下町にある「下市(しもいち)」という2つの商店街がありました。しかし、上市は完全にシャッター通りになっていて、秋になるとコオロギの鳴き声が風流です。下市に至っては、商店街の痕跡すら見出すのが難しいぐらいです。

それどころか、県庁所在地の水戸駅前ロータリーですら、空き部屋が目立ちます。

一方で栄えているのは、駅ビルと郊外のショッピングセンター。水戸の主要交通機関は電車とバス、そして、自家用車です。駅前のバス停で降りた通勤・通学の人は、駅ビルに直行して、街を回遊しません。また、自家用車もショッピングセンターの駐車場に入ってしまって、寄り道をしません。

街が便利になると、人は歩かなくなり、そして、街にお金を落とさなくなってしまいます。京都や金沢などの観光地は、人を飽きさせないように回遊させています。

岡本商店街がにぎわっているのも、摂津本山駅と岡本駅がほどよく離れている不便な構造に、商店街振興組合の松田朗理事長の個性的な手腕が加わっているからです。阪急とJRの線路をくっつけて、駅ビルとロータリーを作って便利な構造になったら、周辺の商店街は壊滅してしまうでしょう。JR摂津本山駅が橋上駅舎になり、改札口前に便利な店舗が数店並んだだけで、周辺商店街への影響が少なくありませんでした。

そのため、街づくりは人が長い距離を歩かなくてはいけない不便な構造と、街歩きを楽しめるような仕掛けが必要です。その核となるのが、個性的な個人商店です。

東灘区には酒蔵があり、商店街や温泉(銭湯)もあります。このような散歩を楽しめる遊び場所を拠点にした不便な街づくりが必要でしょう。

今は、自転車も飲酒運転が禁止です。しかし、泥酔やいねむりをしていても動かせる車と違って、酒酔い状態の自転車乗りは歩くよりも難しい。飲酒運転は、自動車ならば加害者になりますが、自転車ならば自業自得になるはずです。

飲酒自転車運転の事故の統計を取り、加害事故の発生件数の比率が歩行者並みに低いようなら、地域経済活性化のために、飲酒自転車運転を解禁すべきでしょう。それを地方議員が連帯して、国に働きかけるような取り組みも必要だと思います。

利便性を求めすぎると、最後はスマホで発注できる通販にまで行き着いてしまいます。

不便で合理的でないからこそ、街はおもしろくなります。世界の主要な観光地は、宗教や芸術が基盤です。そして、人気があるのは、地元の人が集まる市場・マーケット・マルシェです。

「その土地で当たり前のもの」が観光資源になります。

(難易度:中、短期的効果:小、長期的効果:中)​​​​​​​

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